長い人生を生きてきた末に選んだ生き方、ノマド達の日々。
こ .. >(続きを読む)
長い人生を生きてきた末に選んだ生き方、ノマド達の日々。
これまでの人生も含めて生きていくことの厳しさも感じさせながらも
厳しさの中にも助け合い、日々の暮らしの中にあるささやかな楽しみを共有しゆっくりと生きていく。
実際にこの生き方を選んだ人達が自分自身を実に自然に演じている。
本作で3度目のアカデミー賞受賞となり、すっかり大女優となったフランシス・マクドーマンド。
しかし本作ではそのオーラを見事なまでに消し、見事なまでに彼らと同化し彼らの日常に溶け込んでいる。
同じくオスカーを獲った前作「スリー・ビルボード」とは実に対照的な表情を見せる。
批判精神が前面に出るわけでなく、殊更彼らを弱者として扱うこともせず、
作品の空気も実に淡々と、ゆったりと彼らの日常を映し出していく。
何の苦労も悲しみも無く楽しいことばかりで生きていければいいけど、そうはいかないのが人間。
時に弱さも見せますが、それでも長い年月を生きてきた彼らの生き様からは、人間の強さ、逞しさも感じる。
作品は特に何か答を見出す訳でもなく、旅を続けるバンの後ろ姿で終わりますが、
「旅立った仲間達に捧ぐ。またどこかの旅先で」という、その生き様の一端を表すような最後の言葉が印象的です。