まだ幼い息子を乗せて被災地に向かう1人の男。
最初は彼が何 .. >(続きを読む)[良:1票]
まだ幼い息子を乗せて被災地に向かう1人の男。
最初は彼が何者かもその目的地も、何をしにそこへ行こうとしているのかも分からない。
1990年にイランを襲った大地震。
やがて目的地がコロルという壊滅的被害を受けた村であることがわかる。
そしてコロルを知っているという者に出会い、この少年を知っているかい?と差し出した写真。
写真の少年。見ている僕にも見覚えがあった。キアロスタミの代表作の1つにして
「ジグザグ道三部作」の第1作、「友だちのうちはどこ?」に主演していた、
友だちのうちを探して、村をさまよっていたあの男の子だ。
キアロスタミが「友だちのうちはどこ?」の舞台となった村コロルを訪ねて旅に出るストーリー。
作品の至る所に、タイトル通りの「そして人生はつづく」風景がいくつもあった。
子供や兄弟、身内を亡くしたという人々が多数登場しますが、
印象的なのは茫然として立ち尽くし、涙にくれている人が誰もいないということ。
男の黄色い古ぼけた車は舗装されていない坂道を苦しそうに上がっていく。
重い荷物を担ぎ、その坂道を徒歩で行く多くの人々とすれ違う。
時には彼ら被災地の人々から水を分けてもらい、時には坂道を行く被災地の人々を車に乗せてあげる。
支え合い、力強く生きる人々の姿がありました。
最も印象的なのはラスト近く、サッカーのワールドカップを見るためにアンテナを立てていた男とのやり取り。
「家族を亡くした人が大勢いるのにサッカーを見るのかい?」
「僕も家族が3人死んだけど仕方ないさ。4年に1回のワールドカップを見逃せないよ。」
そしてラスト。車はコロルに向かう最大の難所である急坂を、一度は駄目になりながらも再び力強く登っていく。
生きていると何度かは本当に投げ出したくなるような辛い坂道もあるけれど、それでも生きていかなければならない。
それはまさに「そして人生はつづく」という風景でした。[良:1票]