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<ネタバレ>人を好きになるということは人間関係に濃淡をつけることだ。好きな人と、好きではない人の間に線引きをすることだといってもいい。主人公が最終的に選んだ「最も大切な人と関わらない生き方」とは、この「濃淡をつけるという仕方で人を好きになること」を拒む生き方だといえる。記憶の作り変えが教えるのは、今生きている世界が偶然の産物だということ。そのことから今の世はかけがえないと考える人もいるだろう。しかし、大切な人を好きになることが偶然だとしたら、そのことに人間は耐え切れるか? 偶然だからこそ運命的なのかもしれないが、そんな空虚な理論的運命では人は生きれない。リアルに実感できる運命が必要だ。こんな風に、人間関係の濃淡付けに必然的な理由や意味合い(運命)が見いだせないとき、明晰な知性が選ぶのは「人間関係に濃淡をつけない」生き方ではないか? 「記憶を作りかえる能力」を「想像力」に置き換えれば、この映画の主題は全ての現代人にも通じる。思いのほか深い傷跡を残して。