<ネタバレ>本作は単に戦争の恐ろしさというよりも、特に「内戦」の恐ろしさ .. >(続きを読む)
<ネタバレ>本作は単に戦争の恐ろしさというよりも、特に「内戦」の恐ろしさを「体感」できる映画だった。
同じ国民同士が分断し、内戦状態になれば、疑心暗鬼の社会になる。
敵か味方かは分別しがたいため、身を守るためには、相手が誰であれ攻撃する。人の数だけ正義が生まれる。人間の獣性が野放しになる。
内戦で混乱した社会では、無法状態が生まれ、治安は守られない。
しばしば停電が発生したり、水の供給が止まっているインフラの混乱もきちんと描かれている。
本作において、内戦に至る経緯やその構造についての説明や描写が省かれているのは、そういった内戦状態になった時、そこに置かれた人々が直面するであろう混乱や恐怖を主観的に「体感」させるためではないか…と思いながら鑑賞した。
戦場カメラマンやジャーナリスト視点のロードムービーという構成はその目的には叶っており、終始ダレることなく鑑賞できた。
「体感」といえば、本作の音響効果は群を抜いて秀逸なため、劇場で鑑賞しなければその価値が半減するくらい重要だ。
単に銃声や爆発音だけでなく、薬莢が転がる音、瓦礫が飛散する音、ヘリコプターや戦車の音…全てが(恐らく)リアルだった。
決して観て面白いというエンタメ映画ではないが、深刻な分断を抱える世界に生きる私たちは、本作をとおして分断の先にある景色を観ておいて損はないと思った。