<ネタバレ>前半の善良な青年から、後半の荒んだ復讐鬼へ。スペンサー・トレ .. >(続きを読む)
<ネタバレ>前半の善良な青年から、後半の荒んだ復讐鬼へ。スペンサー・トレイシーの変貌ぶりが憎悪の奥深さを雄弁に物語り、映画に濃い陰影を投げる。
保安官事務所に民衆が集結してくるモブシーンのクレーンショットが、その後の波乱を予感させて秀逸だ。
事務所が火炎と黒煙に包まれる中、暴徒の笑顔のクロースアップが短く積み重ねられるモンタージュによって彼らの禍々しく残忍な印象が一層際立つのも、一種のクレショフ効果か。
裁判の重要な証拠となるニュース映画のストップモーションと共に、インパクトが強烈だ。
ショーウィンドウや、「22」の視覚的記号と共に、私刑と復讐の主題系はドイツ時代から連なるフリッツ・ラングの特色だが、ハリウッド的甘味を折衷させたラストはやはりどこか、渡米後第一作の不自由を思わせる。
床屋のシーンや、裁判長の宣誓シーン、犬やアヒルのショットなど、暗い主題を中和するユーモアも随所に散らばり、作品のバランスに対する苦心と配慮を窺わせる。