ピンク色のランプシェードが淡く反映する列車の車窓を介して、あ .. >(続きを読む)
ピンク色のランプシェードが淡く反映する列車の車窓を介して、あるいは深い森の木陰で、クリストファー(ミシェル・ヴォワタ)は時空を越えてルクレツィア(キャロル・ブーケ)と視線を交錯させる。
カメラと正対した彼女の美貌と謎めいた眼差しは観るものを虜にせずにおかない。
謝肉祭の喧騒の中、仮面を外した彼女の表情が蝋燭の光に次第に浮かび上がり、妖しい瞳と口元の動きが復讐の「斧」を示唆するかに見える。
撮影はレナード・ベルタ。蝋燭、松明、焚き火、青白い月光といった慎ましい光が17世紀の夜の闇を生々しく印象付ける。
森の中をジョギングする人々を追う左へのパンが、中世の馬群の疾走にスムーズに繋がっていく時空往還の感覚の見事さ。酒場の賑わいをゆっくり捉えていく移動の魔的な魅力。
ダニエル・シュミットらしくドキュメンタリー風のニュース映像から始まる怪奇譚は、ファンタジックと云ってもよい白光と、ピノ・ドナジオの甘美な旋律で締めくくられ、そのラストショットはただ美しい。