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<ネタバレ>パースを活かした縦構図が多用されるが、その突き当たりは移送列車の壁であったり、刑場と思しき地下へと続く階段の暗い闇であったり、濃い夜霧であったりと、見通しは悪く閉塞した空間が充満している。ファーストシーンの橋における右往左往の混乱状況もまたポーランド情勢そのものの縮図であるかのように遠景は展望を欠く。
そんな中、青年と娘が見晴らしの良い屋根の上に登る場面で一時の開放感が訪れる。1ショット挟まれる街の見晴らしが切ない。二人が交わす映画の約束とキスに、『灰とダイヤモンド』の青春像がよぎる。彼が既に前段で「記念写真」を撮るシーンをもつこともまたその後に待つ運命を予感させ、より切実で印象深い場面となっている。その他、日記が途切れ白紙となったページを風が繰るその虚無感。墓地に差す夕陽の淡い光線なども印象的だ。
映画のラスト。犠牲者の手に握られたロザリオと共に、パワーショベルの土に埋もれ、暗溶する画面にレクイエムが被る。地中の暗黒の視点と無音には、飽くまで「埋められる側」に立つアンジェイ・ワイダの矜持と同時に、語るべきことを語った、というような情念がある。