ジャン・ルノワールとアルベール・デュードネの共同監督名義とい .. >(続きを読む)
ジャン・ルノワールとアルベール・デュードネの共同監督名義という、曰くつきの作品。様々なバージョンがあり、両者の関与の程度についても様々に議論があってややこしいが、ルノワール作品らしい瑞々しいショットに満ちている。同時に、随所に見出されるグリフィスへの傾倒も非常に感慨深い。放浪する「孤児」であり、「小間使い」である少女の薄幸のイメージ。照明とフォーカス効果、クロースアップを最大限に活かして、主役カトリーヌ・エスランの容貌を美しく印象付ける配慮。群衆が乱舞するニースのカーニヴァルのスペクタクル性と、屋内・屋外のダンスを「円」で繋ぐカットバック。さりげなく物語に機能する「椅子」。そしてラストのクロス・カッティングを駆使した「列車と自動車」による怒涛の一大救出劇。あまりに率直で直截なオマージュからは、初作品を通しての映画への思いが伝わるようだ。特に迫力に溢れたクライマックスの路面電車の暴走は圧巻である。後の『獣人』で鮮烈な印象を残す列車疾走の先駆けともいうべき圧倒的な画力に圧倒される。車両を背後から捉えるカメラは振動でぶれ、木立は流線となって後景を飛び去っていく。位置関係の整合性、スピードの一貫性を無視した荒々しい編集が却って無方向的なエネルギッシュさを発散させて『イントレランス』にも引けをとらない感動を生んでいる。