作中二度目の『愛のファンタジー』が流れる喫茶店内、
ユ・ホ .. >(続きを読む)
作中二度目の『愛のファンタジー』が流れる喫茶店内、
ユ・ホジョンの成瀬目線によってかつての片想いの相手の登場が仄めかされる。
そこでパラレルに映し出される失恋の記憶。
同じくここでもシム・ウンギョンの目線送りが彼女の想いを語る。
彼女の視線を介すことで、画面外の出来事への思い入れと共有感覚がより増す。
現在の視線、過去の視線がシーンを繋ぎ、鏡面のように交錯・融合しあう
夜の歩道とベンチの場面が美しい。
その冴えわたる視線演出はラスト数カットで再び見事に決まる。
それらが感動的なのは勿論、台詞を大幅に削り、
視線によって心を通わすシーンだからだ。
対して遺言のシーンがつまらないのは、
その内容やリアクション云々より何より台詞偏重であるからということになる。
ありがちな故人のヴォイス・オーバーなどを用いずに
第三者の代弁として処理したことでかろうじて
言葉そのものがより活きたものとはなっているが。
続く都合三度目となる『サニー』のダンスシーンは
約1秒刻みにまで分解した細切れカッティングが煩わしく、
リズム感覚やテンポと引き換えにダンスの映画性が大きく減殺している。
暴力沙汰で護送される車両内のラジオから流れてくる『サニー』に
それぞれが体を動かしだす1ショットのほうが断然良い。
『ラ・ブーム』譲りのヘッドフォンの活用など、
前作同様に音楽の挿入方法についてはかなり凝り性らしい。
物語的な貶しどころも多々あるがキャラクターの魅力が何よりだ。