<ネタバレ>原作では海辺が舞台となる謎解きシーンは、映画では取調べ室に置 .. >(続きを読む)
<ネタバレ>原作では海辺が舞台となる謎解きシーンは、映画では取調べ室に置き換えられる。
本来なら、その後に続く杏と風吹ジュンの面会シーンのようなセットとしたほうが
いかにも現実的で「ツッコまれ」ないだろうが、映画はあの部屋を要請する。
劇中で幾度も変奏されてきた反射装置の極め付けと云うべきミラーガラスが
そこにあるからに他ならない。
この1枚の仕切りを介した視線の劇が、
『パリ、テキサス』とはまた別種の形容し難い情感を生む。
母娘の正対する面会シーンもまた、仕切りを介して現在と過去を交錯させる。
息せき切って走る、フラッシュバックの中の娘。
揺れる水面上で、マジックミラーの背後で、喘ぐように嗚咽する現在の娘。
女優の呼吸が、ヒロインのキャラクターに文字通り生を吹き込んでいる。
そして疑似父子としての福山雅治と山崎光が
幾度もロケット実験を繰り返すシーンの清々しさは、その放物線の美しさと共に
『父ありき』の川釣りのシーンにこじつけたくもなる。
二人が横並びで座る駅舎のベンチシーン。
福山の誠実な語りの響きがいい。