<ネタバレ>『鉄拳』のクライマックスも場が月面に飛躍してしまうのだから、 .. >(続きを読む)
<ネタバレ>『鉄拳』のクライマックスも場が月面に飛躍してしまうのだから、こんな展開でも驚くまい。
岸部一徳の物語的にも映画的にも少々脈絡に欠ける行動、加えて主に斉藤 工が担わされることごとく笑えぬギャグにも耐えよう。
それらを補って余りあるくらい、不器用な妻を演じる藤山直美がいい。
『時代』を熱唱する彼女の楽し気な夢想シーンがちょっと長いかと思うと、一転してヘルメットのショット、息子の遺影のインサートとともに現実に引き戻され、彼女を喪失感が襲う。思わず嗚咽をもらす彼女がいじらしい。
パート先のスーパーの裏口でマネージャーから叱られ、レジ係の一人芝居を演じる彼女の姿が可愛らしい。(それを大楠道代が窃視する。)
テレビレポーターの質問にあっけらかんと笑う彼女の呵々大笑ぶりがいい。
そして、岸部と二人、夜を徹してひたすら漢方作りをする労働のモンタージュがとにかく美しい。
仕事の合間に柔軟体操し、おにぎりを頬張りながら夫婦協働で丸薬をつくりあげていく、その二人の不格好な姿が何故だか不思議に胸を打つ。
二人の、長年連れ添った者どうしの対話も味がある。