3部作の第2部にあたる。大地震に見舞われた村(前作の舞台)を .. >(続きを読む)
3部作の第2部にあたる。大地震に見舞われた村(前作の舞台)をキアロスタミ監督が再訪する設定の中でフィクションとノン・フィクションが絶妙にせめぎ会うロードムービーの傑作。
大渋滞する幹線道路を父子の自動車が行く。車窓を流れていくのは半壊した家々、落石に押しつぶされた車、家財を背負い側道を歩く避難民。救急車両のサイレンやヘリのローター音の喧騒が生々しい。
同時にその被災の光景は引いたキャメラで捉えられるとき、混乱と悲惨だけでない大らかさと悠久の詩情をもまとう。同じく喧騒の音は、活気ある復興の槌音でもある。
村へ向かう車中、捕まえたバッタを逃がすよう父に叱られる息子が浮かべる何ともいえない表情や、優しい木漏れ日が揺れるオリーブ林の中であやされる赤子の無垢な顔、避難キャンプの水場で洗い物をする少女たちの可憐な佇まい、サッカーワールドカップ中継を受像するためのアンテナを懸命に立てている青年の笑顔、便器を持ち運ぶ老人の饒舌。
いずれもただ素晴らしく、失意と悲嘆を越えた生気と強かさに自ずと惹きつけられてしまう。
そしてラストの超ロングショットは象徴性が勝ちすぎながらも、やはり目を瞠る。
丘の上を目指し、遅々としながらも急坂を懸命に登っていく小型自動車の動きはキャメラからの距離に比例して人物との同化の度を増し、エモーションをかきたてずに置かない。