<ネタバレ>舞踏会はやがて終わりを迎え、紳士貴婦人が無数の人だかりとなっ .. >(続きを読む)
<ネタバレ>舞踏会はやがて終わりを迎え、紳士貴婦人が無数の人だかりとなって帰り路につく。画面は彼らの無数の顔から表情を拾うが、明るい顔付きの者は一人としていない。豪華な衣装や巨大な宮殿とは裏腹の憂鬱が、彼らのこれまた無数のささやきと共振して映画を観る人々に「もうすぐ映画も終わりだよ」と告げているみたい。事実、カメラはそのまま出口へと進み、ぼやけた海の前で立ち止まり、監督自身の呟きと共に幕を閉じる。しかしその声は、「終わりはない」「私たちは永遠に生き続ける」と小さいながらはっきりと呟く。ソクーロフの映画はいつも締め方がいい。エルミタージュ美術館が保存してきた空間と時間のアーカイブを一呼吸で切り取ってしまおうという大胆な方法にア然としながらも、この縦軸横軸をシェイクした迷宮に映画という斜めの軸をぶちまける思い切りのよさにしびれる。芸術としての高みよりも映画としての高みを感じるこの映画は、「チャーリーとチョコレート工場」の夢の工場を探索するように見られるべきだと思う。もちろん豪華さ、案内人(このオッサンがとにかく最高)の魅力ともに「エルミタージュ幻想」が勝るのは言うまでもない。