<ネタバレ>松本清張の原作って、大体面白くなくて、いつも映像化に助けられ .. >(続きを読む)
<ネタバレ>松本清張の原作って、大体面白くなくて、いつも映像化に助けられている感があるが、今回のゼロの焦点もまた、中谷美紀の恐ろしく、悲しい表情に助けられた。
鵜原健一と一緒に断崖に立った、室田幸子の表情の恐ろしさ。かつて自分たちを逃がしてくれた、憎からず感じているどころか、自分と同様に新しい世界を夢見ていることを知っていながらの、恐ろしくも悲しい殺意を秘めたあの表情を観ただけでも、この映画を観たかいがあったと想う。
それに対比するように、田沼久子の最後のシーンの両者の表情。久子はこの期に及んで、覚悟を決めたフシがあるが、幸子の殺意から、逡巡にいたる表情は、素晴らしい演技。
演技としてどうこういうわけではなく、登場人物として考えると、これに比べて禎子の夫を殺されたという、「だけ」と言っちゃ語弊があるが、それだけの人は、「まあ、悲しかったね」という感じ。
いやあ、久しぶりに、良い邦画を観た気がする。なんで、映画館で観なかったんだろう。