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<ネタバレ>『ヴェニスの商人』はユダヤ人を差別しているという見解があり、今作ではシャイロックをいわゆる〝悪役〟にせず悲劇の面もしっかり描いています。しかし、それが逆に鑑賞後の後味を悪くしてしまっています。シャイロックは確かに慈悲や情けと言ったものとは無縁だったかもしれませんが、それだけで信仰すらも失ってしまうのは観客として納得がいきません。ましてユダヤ人だからという理不尽な理由で酷な仕打ちを受けてきた彼の苦悩が描かれていれば猶の事です。その上、演じるのはあのアル・パチーノ。彼は善悪問わず悲劇的な役でオーディエンスを共鳴させてしまう第一人者でありシャイロックに荷担せずにはいられません。となると、ポーシャ側に素直に感情移入など出来る訳も無く、さらに指輪遊びがしっかり描かれると、人生を失ったシャイロックの悲劇が一層強調され物語自体が腑に落ちなくなってくるのです。唯一の救いはシャイロックの娘ジェシカがシャイロックから貰った指輪をしていたシーンを用意した事ですね。拠り所を失い、一人佇むアル・パチーノの悲しい目が忘れられないです。 出演者は皆実力派でヴェニスの街並みも良いのでクオリティは高かったんですけどね。