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<ネタバレ>実話が基になっている銀行強盗が主役の話にもかかわらず、哀しい結末に切ない心持になってしまったのは巧妙な作りだからに他なりません。もうのっけから巧い。一人は怯えて逃げ出し、ソニーの銃を取り出す姿は不恰好。観客もまるで人質となったように強盗と警察のやりとりにグイグイ引き込まれてしまう見事な展開。確かにソニーたちは犯罪者に過ぎませんが本当は悪人どころか気のいい彼らの人格が徐々に明らかになるにつれて、心動かされ銀行を取り囲む警察や群衆がどんどん敵に見えてきます。そうして強盗せざるを得なくなってしまった社会背景が浮彫りになってくる。戦争の帰還兵サルは海外逃亡先を尋ねられると国内である「ワイオミング」と答える。ろくな教育を受けていない彼の生い立ちが想像でき悲しさを誘います。本作は弱者を生み出す社会に対し問題提起し、英雄を仕立て上げるメディアを皮肉った社会風刺の利いた作風なものの、難しいわけではなく娯楽色もあるのでただ楽しむこともできます。そしてそれはアル・パチーノに寄るところが大きいです。パチーノは悲哀に満ちた役が底抜けに巧い。彼は負のキャラクターでも観客を〝いざない〟共感させられる俳優だからです。そんなこんなでついつい見入ってしまうのです。
・・・ところで原題の日本語訳は〝うだるような暑い日〟。〝狼たち〟とは明かに誤訳と思われる邦題ですが、そこにはソニーたちが社会に食らい付いて何とか生きようとしている必死さがありますね。