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<ネタバレ>本作がどういった経緯で作られたか存じませんが、物語の内容や製作年からして普通ではないと思うのですが、全編を通してカメラをほぼボートから出さずに撮りあげ、ナチを優秀な人物として描いたヒッチコック監督もやはり普通ではないでしょう。
ただ、導入部は素晴らしいのですが、救命艇に人物が出揃いカメラも一緒に乗船し臨場感を出すという試みがなされてからは、この船というシチュエーションが十分には活かされておらず、結局のところ密室劇であり、これなら一人一人の行動が常に把握できる舞台の方が良いではないかと思ってしまいます。・・・しかし、嵐がきてからはあのナチの如く俄然、調子が出てきます。突然、英語をしゃべりだしドイツ語で歌いながら船を悠々と漕ぐ変わり様は鮮やかですし、恋模様にしてもアップで撮られているリボンをほどいてしまう、あるいは足の裏を足で擦るといった仕草が、何ともエロティックです。ですが、一番凄いと思ってしまったのは状況とは対照的なヒッチコックのユーモア溢れるカメオ出演の仕方です。