<ネタバレ>クールでかっこいい。子供を出している映画なのに、とことん甘さ .. >(続きを読む)
<ネタバレ>クールでかっこいい。子供を出している映画なのに、とことん甘さを排しているところがいい。
一家惨殺までの場面をダラダラ説明せず、観客に最小限の情報を与えてテンポよく見せる。うまい。あえて惨殺場面を見せず、マンションのガラスが内側から吹き飛ぶ場面だけで語る。うまい。
特に感心したのは、グロリアとフィルのママの関係性について、ものの5秒くらいしか説明していないというのに、その後のグロリアの行動で充分想像させてしまうことだろう。
「コーヒー飲ませて」とフラッと訪れることのできるご近所さんなんて、そんなにいるだろうか。グロリアは、「彼女が在宅なら必ずコーヒーを飲ませてくれる」という確信を持っている。相手が不在なら、別に構わない。もし居るならば、彼女の顔を見て、おしゃべりをしながら、コーヒーをごちそうになれば、この世の「憂さ」も少し晴れるような気がするわ。…と、外出帰りのグロリアはインターホンを押す。
きっと、こういう関係になるまでには、フィルのママとグロリアの間にはそれなりの「歴史」があったに違いない。共通点は「一匹狼」で冒険を恐れないところだろう。
普通なら、普通の監督なら、まずは「日頃の関係」をある程度見せてから一家惨殺を見せると思うのだ。「惨殺」の悲劇的な効果をより狙うならそうだろう。
フィルのママとグロリアの浅からぬ関係は、その後のグロリアの行動にとって非常に重要なものなのだが、この映画では事件前の「日頃の関係」を全く見せることなく、それをなんと「コーヒー飲ませて」と、「私の親友なのよ」というママの言葉だけで充分語ってしまう。ほんとうにクールだ。
この映画は「激動の昼間」と、「静寂と暗闇の夜」の繰り返しになっている。「朝起きて、昼逃げて、夜寝る」の繰り返しだ。そして、繰り返すことによる効果を充分上げている。なんというか、「連続ドラマ」を何回分か見ているような気持ち。実際には何日も経っていないというのに、冒頭の事件から、どんどんどんどん遠いところへ連れてこられたような気持ち。上記のママとグロリアの件といい、非常に巧みな脚本だと思う。
最初は憎たらしかったフィル小僧が、途中から可愛く見えてくるのも、この映画ならではの醍醐味だ。大傑作。でも子供はもう少しお行儀よくね。