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<ネタバレ>最近急に陽が当たってきたジョシュ・ブローリンです。その昔「ナイトウォッチ」というユアン・マクレガー主演のサスペンスがありましてー、ニック・ノルティのブキミさが光る隠れた名作ですが、ジョシュは「遊び人で女たらしの大学生」という(本当です!)脇役で出演。私はこの役のジョシュに惚れてしまったのです…。
その後鳴かず飛ばず。バホ作「インビジブル」で再会したときにはすでにオヤジ化が進んでおり、かつての面影もなく…。
そんなジョシュにツキが回ってきたらしい!ジョシュよかったね!
で、モスの義母の墓標によるとこれは1980年の話です。なぜ80年なのでしょう。
「己の能力を過信する男」モスのその「過信」の根拠は「戦争経験」であるということで、妻は「なんでも自分ひとりで出来る人なの」と言っています。
それではこの目を覆うような暴力の数々の原因はすべてベトナム戦争だと言っているかというとそうではなくて、たとえばシガーは「20年間コインで人生を決めてきた」のだから、違うでしょう。また、1909年にベルの叔父を玄関先で撃ち殺したのは「インディアン」です。…そう、遡ればその国の成り立ちからして「もともと暴力じゃん」なのです。
さてシガーというのは「オーガの体を持ったターミネーター」のように意図的に描かれていますが、それはホテルの部屋で自らの治療をする場面などで明らかです。
彼は邪魔な人間は殺し、特に邪魔じゃない人間は殺すかどうかコインで決めます。感情がないので殺すかどうか決められないからです。
が、一人だけ彼に有無を言わせなかった人間がいますね。トレイラーパークの管理人のオバさんです。シガーに対して全く恐れを感じておらず、自分自身についてなんの迷いもない、オバさんなのです。ということは逆の場合は危険なのです。
ベルが死刑にした「感情のない殺人者」の生き延びた姿がシガーであり、1980年に「暴力から抜け出せないこの国のありよう」を嘆いていた「オールドマン」たちは、2008年の今、みな死んでいる、それが「1980年」ということです(たぶん)。…そしてもう嘆く人たちはいなくなった、のです。
冗長に感じるほどの淡々とした描写と、ギリギリまで省略したテンポのよい場面のアンバランスに少々難を感じます。が、コーエン兄弟の実力を感じさせる一作。[良:1票]