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<ネタバレ>国家社会への対抗心やアングラ芸術への傾倒、またはエロチシズムでの表現といった様々な形で邦画界に名を残すオーシマだけど彼の作品の根底にあるものは「全体主義の中の孤独」。鬱屈を抱えて生きている人の疎外感や屈辱、労苦を取りあげそんな者を生み出す社会への告発・そして影に隠れて生きている者への掬い上げ(例えば横尾忠則やフォーククルーセーダース、荒木一郎やビートたけし、ま阿部定もそうかもしれん)が作品のテーマと思うが何せ主義主張の多い彼の作品は、正直疲れてしまう。ただ実在した当たり屋一家の事件を題材にした、「当たり屋役」で一家を支えている少年のロードムービーである本作は淡々とその道行きを撮しているだけでそういった強烈なインパクトは無く普通。ところがこれが過酷。掬い上げすらない。大人の自我を持たないままの「少年」が親のいいなりになって犯す犯罪だけが家族を繋ぐ「絆」という苦しみ。雪だるまを相手に「宇宙人が素敵な未来へ弟と共に連れ去ってくれる」という想像の発露。そして義理母が与えてくれた愛情の印=時計が招いた少女の事故死と家族の崩壊。胸がつまる。そしてラスト、護送される車内の中で涙する少年のショットは映画監督オーシマの力量を感じる。個人的には「愛のコリーダ」と並ぶ彼の名作。