<ネタバレ>ネタバレあります。未見の方はご注意ください。
『恋する .. >(続きを読む)[良:1票]
<ネタバレ>ネタバレあります。未見の方はご注意ください。
『恋するトマト』『クマインカナバー(ごはん食べましたか?)』。1つの物語にタイトルが2つ。これは『ラブロマンス』と『家族の在り方』、2つのテーマを内包しているためと考えます。まず『ラブロマンス』について。異国の地で結婚詐欺に合いどん底に落ちた主人公は、何とか立ち直り、運命の人と出会えました。彼女の家業を献身的にサポートし、信頼を獲得。弟くんを手懐け、ついには相思相愛の関係を築きます。今までの婚活のようにガツガツせず、しっかり手順を踏んだ事が功を奏したワケです。いわば怪我の功名。人間、挫折を経験するのも悪くありません(死なない程度に)。さて、このままフィリピンで2人が結ばれれば『ラブロマンス』として『妥当なハッピーエンド』でしたが、主人公は帰国を望みました。これには『農家長男の性』が大きく影響しています。本作で語られる『家族』の定義は、『夫婦』あるいは『夫婦とその子』ではなく『夫婦とその親』であります。かつての日本や農家、フィリピンでは当たり前の価値観です。ここから先が『家族の在り方』についての話。彼女の父親は日本へ嫁ぐことを許しません。傷みやすいトマトを輸入する難しさと同じ。美味しいトマトも、一緒に食卓を囲む家族も、生活圏内で確保するのが常道です。それでもなお、障害を乗り越えるのが『愛』でしょう。さて、一見ハッピーエンドにみえる結末ですが、果たして本当にそうでしょうか。2人が抱き合う前に終幕となったことが、どうにも引っ掛かります。ラストシーンは、主人公の願望が見せた幻の可能性も大いにあると推測しました。愛する彼女と同じ年頃の娘さんを日本へ売り飛ばしていた主人公が、報いも受けずに幸せになれますか?(結婚詐欺被害とは相手が違うので相殺不可)それに主人公が望む『家族の幸せ』と、彼女が求める『家族の幸せ』は等価値のはず。どちらかの犠牲で成り立つ『幸せ』をハッピーエンドと呼べるのかという話です。シビアな現実をラブロマンスで包み、口当たりは甘め。しかし噛みしめるほどに苦みを感じてしまいます。(以下余談)結末の解釈については、正直言い掛かりです。私もクリスティナちゃんは日本に来てくれたと思います。ただし実家への『金銭援助』は必須。カワイイ彼女も10年もすれば倍の太さになるでしょう。田植えと稲刈りで年に2回は里帰りするでしょうし、将来的には母国に帰るかも。子育て、借金苦、親の介護に悩まされる人生を、本当に主人公は望んだのでしょうか。いやー震えますな。もっとも、人生の悩みの大半は『お金』で解決します。主人公の場合、農業より別の道で才能を発揮できそうですが、自分自身で気づいているかどうか。やりたいこと、やれること、やらなければならないこと、向いていること。一致しないのが人生の難しいところです。[良:1票]