<ネタバレ>設定はマイナス要素に溢れています。ダメダメな家族で全然イケて .. >(続きを読む)[良:6票]
<ネタバレ>設定はマイナス要素に溢れています。ダメダメな家族で全然イケてない。でも世界を包む空気は寒々しくありません。まずそれがいい。軽やかでほんのり暖かい音楽と共に物語は綴られていきます。構図も“はっ”とするほど美しい。そして何より人の描き方が素晴らしかった。端役に至るまで“こんな人いる”と思えました。画面の中の世界は、自分が生きている世界と同じ。だから大きなフリ幅で、心を揺さ振られたのだと思います。時に自身を顧みて嫌悪し、自嘲しました。同情し共感しました。各人に感情移入し、気付くとこ自分も家族の一員になっていました。大いに笑い、くしゃくしゃになって泣きました。クライマックスは娘のステージ。ストリップまがいの珍妙なダンス。それをみて大笑い。「ああ、じいさんとの奇妙なレッスンはこういうことだったのか!」と。でも同時に胸が痛くて苦しくて。お父さんの口癖を借りるなら、この家族は“負け犬”だらけです。彼らのダンスはみっともない。でも美しかった。心に響きました。“娘を守りたい。”その気持ちが強く伝わってきました。もっとも、彼らの行為が許されるとは思いません。コンテストを無茶苦茶にした罪はある。例えそれがクソみたいなコンテストでも。しかし理屈ではなく共感してしまう。「お前たちに、うちの娘を値踏みされてたまるか!」「このダンスの何が悪い!」逆ギレもいいところです。でもそこには愛がありました。巷に溢れるまがい物ではない本物が。客観的判断も価値基準も必要としない。見返りも無い。ただ全てを肯定する。「お前を愛している」「お前を誇りに思っている」そう言わなければならない時があります。しかもオリーブはまだ子供。家族が守らなくてどうする。家族が与えなくてどうする。一番大切なものに、この家族は気付いたのだと思います。愛されることは、自信に繋がります。戦う勇気と力に変わる。オリーブは、そういう生き方が出来る人間になってくれると信じます。じいさんは言っていました。負け犬は、負けることを怖れてチャレンジしなかった者のことだと。自己啓発プログラムでいう“勝利”と違う“勝ち”がある。負けがない、勝ちがある。この家族が敗者だなんて、自分には思えない。[良:6票]