<ネタバレ>原作小説は未読。1974年制作の映画は鑑賞済の感想です。ネタ .. >(続きを読む)[良:3票]
<ネタバレ>原作小説は未読。1974年制作の映画は鑑賞済の感想です。ネタバレしていますので、ご注意ください。
リブートだとか再起動だとか、いろんな言い方があるようですが、人気作品ほど高いリメイク率。特にアメコミ界隈が顕著かと。オリジナルでホームランを狙うより、人気作のリメイクで確実にヒットを飛ばす方が商売として手堅いのでしょう。そこで求められるのが、リメイクの意義です。不出来な作品ならいざ知らず、本来名作を再映画化する必要などありません。一般的には『最新の映像技術』という便利な免罪符がありますが、クラシカルなミステリーにはあまり関係ない話。そこで本作で採用されたリメイクの理由付けは、現代の価値観で捉え直す『罪』の意味でした。なるほど、40数年の歳月が名作ミステリーのリメイクを可能にしたワケです。
注目すべきはポワロの選択。探偵が提示した推理は、これ以上誰も傷つけないA案(嘘)と悲しき真相を暴いたB案(真実)の二つ。最終的にポワロがA案を採用する結末は変わりませんが、あくまで推測の範囲内に留めた旧作に対し、本作では犯人に自供を促し真実を確定させています。有耶無耶を許さない厳しさ。“どんな理由があるにせよ殺人は許されない”という強いメッセージが読み取れます。手を取り喜びを分かち合う乗客たちの姿は描かれず、ポワロは真実を闇に葬った十字架を背負いました。この容赦の無さは、現代の『コンプライアンス至上主義』に基づく正義に他なりません。かつての『慈悲』は、現代社会では『甘え』に変わるのです。これは正論。現代社会では正論で間違いありませんが、個人的には『正論なんてクソくらえ』と思います。現実で高い倫理観に縛られ、フィクションの中でさえ雁字搦めでは、息が詰まってしまいます。という理由から私はオリジナルを支持します。(注:本作は地上波放送で鑑賞しました。また旧作を見返していないので、記憶違いがあるかもしれません。その場合は御免なさい)[良:3票]