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<ネタバレ>ハンニバル・レクター登場シーンのインパクトは鮮烈です。透き通った目。理知的な表情、たたずまい。彼が尋常でない事は、まとう空気から伝わってきます。対するは、FBIの研修生クラリス。彼女もまた並ではありません。しかしレクターの前では子供同然。格の違いは明らかです。しかし彼女は果敢に怪物に挑んでいく。レクターの魅力の正体、それは“畏怖”。上級の恐怖です。看護婦の顔を食いちぎった話、隣の囚人を言葉で自殺に追いやったエピソードによって強く裏付けられます。ここで重要なのは、食いちぎられた顔も、どんな言葉で囚人を責めたのかも不明であるということ。想像するしかありません。より残酷に、より凄惨にイメージは膨らみます。ですから、レクター逃亡の過程は、“描き過ぎ”と感じました。警棒でガンガン殴っても、顔を鮮血に染めても、見せてしまえばそれまで。なんだ、その程度かと思ってしまう。想像力には敵わない。ナイフは振りかざすよりも、潜めているほうが本当は怖い。カリスマ的な人物像を壊す行為は、もったいないと思いました。とは言え、レクターとクラリスの対話シーンが秀逸なのは変わらない。問いかける側のクラリスが逆に分析されていく。言葉で裸にされ、心を犯されていく。彼女と同じく観客も身動ぎが出来ません。この雰囲気は極上です。本作が傑作と評されるのも頷けます。2人の絡みが本作の全て。しかしそれは作品としての弱点でもあると思います。もう一つの軸、バッファロー・ビルの事件が見劣りしてしまう。犯人の小物ぶりは酷い。物語の体裁としては、むしろビルの事件のほうが主軸。付け合せは絶品。でもメインのお肉はいまひとつ。根が貧乏性なので、やはりメインディッシュで満足したいです。