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<ネタバレ>「人種差別」と「週刊誌報道の是非」をテーマとしてたSFサスペンス。その主張やメッセージを否定する気はありませんが、この物語でそれを言うのは流石に無理筋かと。だって宇宙人Xを移民や外国人、あるいは被差別民に見立てるのは飛躍し過ぎで逆に失礼ですし、利益優先主義の週刊誌への批判も本件にあってはむしろ公益性が認められるケースかと。差別は憎むべき愚かな行為で間違いありませんが、未知なるものを怖れる感覚は生き物の自衛本能として当然です。宇宙人Xが、人間と見分けがつかないばかりでなく価値観を共有でき生殖も問題ないなんて、そんな都合の良い話を誰が信じるというのでしょう。仮にそれが真実だとしても、人間と異星人の交配を是とするのは種の尊厳に関わる重大案件であり当人が「知らなかった」はあってはならないこと。外国人との結婚や所謂「多様性を認める社会」等と同次元で語れる話ではありません。つまり主張が正しくとも、例示が適切でないため説得力を失ってしまうケースと感じました。喩えるならカレーライスを便器型の皿で提供するような。どんなに美味しくても台無しです。おっと、この喩えは下品かつ頓珍漢でしたか。
ところで日本政府のX容認政策は、某国のマリファナ合法化と同類であり「もうXを排除できないほど人類に溶け込み同化している」を意味していると考えられます。となれば前述の「種の尊厳」を問う段階はとうに過ぎており、好むと好まざるとに関わらずXを容認するより他に道がない状況と推測されます。労働力不足解消のため外国人技能実習生を受け入れまくっている何処かの国の現状と大差ないような。いやはやファンタジーにしては問題が切実過ぎて滅入ります。もっとも同種で殺し合いばかりしている地球人より、Xの性質を受け入れ平和に暮らせるならその方が幸せかもしれません。地球人として凄く負けた気がしますけども。
最後にキャスティングについて。久々に上野樹里さんを観た気がしますが大変素晴らしい。三十路半ばの独身女性の何処か寂しげな憂いの表現が絶品でした。一躍人気者となった「のだめ」当時も輝いていましたが、さらにステージが上がったようで大変好感が持てました。正直本作の上野さんであればXであろうとなかろうと関係なく、同じ「生き物」として一生を添い遂げたいと思えるほど魅力的だったと思います。おっと、妻帯者の不適切発言失礼いたしました。