<ネタバレ>雲の内側の描写を一切排除することで不安を煽る。たった一羽の鳩 .. >(続きを読む)
<ネタバレ>雲の内側の描写を一切排除することで不安を煽る。たった一羽の鳩の生還に、(雲の中の人たちの生存の)希望を見出すしかない。雲の中のパニック状況という分かり易い“見せ場”の描写の放棄には勇気が必要だったと思います。しかしそれは蛮勇だった気がします。物語の主軸は外部からのレスキュー。この部分でドラマを見せないといけません。ところが、著しくリアリティを欠きました。危険な雲という設定なのに、防護マスクを付けている人が一人もいないのは解せません。まさか役者の顔を映したいから?雲を排除するための作戦もその効果の説明も不十分です。緊張感を高めるのに最も有効な“時間の制約”を使わないのももったいない。申し訳ないけど、しょぼい。非常時における人間性の描写もこの手の作品の大きな魅力のはずです。しかしこちらも芳しくありません。人間の冷酷さを描くのはいいです。自分と関係ない不幸には、人はとことん鈍感になれるもの。無責任な野次馬の数々、災害を千載一遇の商機と捉える者。ただし主人公には、そうであって欲しくありません。渡瀬には、妻と息子がいます。家族を守るために命を賭けられるのが父親。仮にそれが離婚間際の妻とコミュニケーション不足の息子であっても。技術者としての誇りと2000万人の命を救いたい気持ちは分かります。でも一人の父親としての顔を見たかったです。もう一人の主役、名取裕子のほうも似た様なもの。挿入される恋愛要素がとても軽薄に思えました。名取裕子の手に触れて渡瀬恒彦が言う「ボクは今ひどく凶暴で危険な男になっています」でズッコケました。