<ネタバレ>まず、形式の話から。繋がりのある三つの短編を合わせて合計1時 .. >(続きを読む)[良:1票]
<ネタバレ>まず、形式の話から。繋がりのある三つの短編を合わせて合計1時間の作品としてまとめてあるのですが、新海監督は、やはり短編がうまいと思います。最初から、一気に見ている人の心をつかみ、一話だけで一本の映画を見たような感じになります。そして物語の中で時間をおいた連作を見ることによって、あたかも長い長いストーリーを鑑賞したかのような印象が残ります。逆に長いストーリーの山場をまとめたダイジェスト版とも言えるのですが、語らないことにより、鑑賞者の経験による補完が作用して、見ている人それぞれの物語に変容するような仕掛けにもなっているのでしょう。モノローグを主体とした展開は、もはや新海節と言ってよく、一つのスタイルとして確立しています。
物語は、淡い恋心や郷愁、孤独といったこれまでの作品に通じるもので、それが完成度高くまとまっている作品です。見た後に、誰かと感想を話し合いたいような、それぞれが思うところを持ちそうな作品で、観賞後さわやかな人恋しい気持ちになりました。
実力に敬服した上で、苦言を言わせてもらうと、コンピューターでモデリングしにくそうな、風に揺れる草や浜辺に打ち寄せる波などの描写で弱いところがありました。そして最後は、山崎まさよしの名曲の力に頼りすぎていないでしょうか。補完の関係を意図したのだろうけども、「One More Time,One More Chance」は、既存の名曲中の名曲で、既にこの曲を聞いた人はそれぞれの思いを持っているから、それを超えるとなると並大抵では太刀打ちできないのではないだろうかと思いました。
アマチュアの自主制作「ほしのこえ」から広く知られるようになった監督なので、アマ・プロの範疇で語られることが多々ありましたが、ここに来て、まさにアニメーション作家と呼んでいい実績をあげていると思います。
これまで「ほしのこえ」「雲のむこう、約束の場所」と、アニメ好きやSFの素養がある人向きと行った、良質ながらも見る人を選ぶものでしたが、今回はだれでも共感を覚えるような作品です。惜しむらくは、タイトルがひねり過ぎでは!宮崎アニメの「ナウシカ」「ラピュタ」ときて「トトロ」に当たるような感じで、世界中の人に見てもらいたい作品です。[良:1票]