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<ネタバレ>これは、将来『切腹』や『股旅』などで展開されていく、「カッコよくない時代劇」のはしりなんじゃないだろうか。タイトルの鍵屋の辻での決闘が話の中心ではなく、むしろ敵討ちに向かうまでの敵味方の心理的な揺れを描き出した作品。しかし、誰も勇ましくないし、格好よくない。三船ですらも、いつもの黒澤作品のように最終的にすべてをさらうのではなく、敵討ちの当人を叱咤するだけ。手は出さない。だから決してヒーローにはならない。出色は三船の側の斥候の役割をする加東大介。表情といい風体といい、彼のベスト・アクティングなんじゃないだろうか。中盤の主役ははっきり言って加東だし。
森一生は、大映のプログラム・ピクチャーを支えた職人的な作家の一人だけど、例外的に会社の外でも作品を撮れた、幸福な人。黒澤明の脚本に真っ向から挑み、かつ、黒澤とはぜんぜん違うシャシンに仕上げたその才能を素直に称えたい。もっと大映の外でも仕事をして欲しかった。