<ネタバレ>積極的に比べるつもりはないが、やはり前作『たそがれ清兵衛』と .. >(続きを読む)[良:2票]
<ネタバレ>積極的に比べるつもりはないが、やはり前作『たそがれ清兵衛』との差異は確認する。とりわけ決闘の経緯が似ているので、二番煎じと捉えられやすいのも解るのだが、私なら断然『鬼の爪』の方に軍配を揚げたい。
理由はいくつかあるけど、その最たるは人情の機微。活劇性重視なら『たそがれ』を好むのであろうが、私はそこにメインを置かないタイプなので、必要以上に殺陣の凄さは求めない。言い換えれば解りやすい「超人性」に今さら憧れないということ。
だから決闘後にこそ人間ドラマを求めたい私は、『鬼の爪』のラストに大きく心が満たされた。
もう一つ秀逸なのが方言。藤沢三部作の中でも重要な要素の一つに思う。『たそがれ』の真田・宮沢、本作『鬼の爪』の永瀬・松は、四者四様の魅力がある俳優なのでどちら側が優秀かを語るのは興味ないが、こと庄内弁の自然さにかけては後者の方が上である。少なくとも昨日今日初めて聴いたのではなく、地元に長年住む私の耳には峻別が付く。この方言への違和感の厚薄は、そのまま人物描写の深みにも通じるので、『鬼の爪』に描かれた情愛の方に感情移入しやすかった。やはり山田監督の学習能力の高さが発揮され、前作において不足だった点を綿密に補っているのが随所に窺える。よって本作の方が傑作に思う。[良:2票]