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<ネタバレ>(娯楽)作品として良くできた映画だと感心したのが第一印象でした。好戦的映画か反戦映画かという議論も(どちらかと言えば戦争礼賛的だけど)結論は出せないというのが本音です。描き方としては「おとぎ話と真実」ということだと思います。終了間際までは「悪いオオカミであるテロリストから無辜な羊である米国民を守るために牧羊犬たる主人公が正義の見方としてイラクに赴く」という2003年のイラク戦争開戦時の米国の掲げた大義名分に則ってストーリーが描かれます。人間的な葛藤はあるもののクリスは西部劇のヒーローであり、悪い奴をバンバンやっつけるダーティーハリーと同じです。主人公の戦争神経症も軽く克服し、傷痍軍人の描き方も比較的明るい。勧善懲悪という前提であれば、殺人も戦争もOKというのが監督の信条ですからその描き方で良いのです。主人公も自分の戦いが家族を守ることにつながっていることに疑問を持っておらず、ありえないことですが戦闘中にも妻と電話で話をします。きっと純朴な主人公に監督自体も好意を持っていて、政府への批判とか政治的メッセージを主人公を通して描くことを「良し」としなかったのだと思います。
しかし最後の場面で圧倒的な真実を観客につきつけて映画が終わります。皆さんが評しておられるようにこのアンビバレントな状態を敢えて監督は残していったのだろうと思います。現在中東はぐちゃぐちゃであり、出口戦略とアジアへのピボット戦略で、イラク戦争開戦時の大義名分など政府の誰も口にしません。だから西部劇の勧善懲悪として(殆どを)描いた作品を米国99%の大衆の視点からはアカデミー賞として支持したけど、米国中枢としては2015年におけるアカデミー賞としては「勘弁してくれ」だったのかなと勘ぐりたくなります。