カズオ・イシグロ氏のノーベル賞受賞に合わせて観賞しました。テ .. >(続きを読む)
カズオ・イシグロ氏のノーベル賞受賞に合わせて観賞しました。テーマが深く重い分期待値も高かったのですが、映画は淡々とした描写に終始しており、そのテーマの重さを取り扱い切れていない感がありました。よく表現すれば演出に抑制がきいていると言えなくもないのですが、本作に関してはどちらかと言えば適切な抑揚を欠いているという表現の方が正しいと思います。臓器や体の一部を提供する運命に対する登場人物の中での納得感が高すぎる点は、ある意味そうした設定なので仕方がないとしても、提供までに彼らに訪れるライフイベントやドラマがやや希薄すぎる気がしました。描かれているのは少し淡泊めな友情と恋愛だけで、せっかくキャシーは介護人という職業についているのであれば提供を看取る中での多くのドラマもあったのでは?という印象です。端的に言えば、原作の提示しているテーマに映画が勝っていないというか、うまくそのテーマを料理できなかった作品というところでしょうか。しかし見たものに重要な倫理的な問題を提起し考えさせるという点に関してはある意味成功している作品かもしれません。