<ネタバレ>最初は「人形の家」を人形で描く現代版か、と思っていたが、もっ .. >(続きを読む)
<ネタバレ>最初は「人形の家」を人形で描く現代版か、と思っていたが、もっと広がって現代人一般の空虚がテーマらしい。心のうつろさ・常に誰かの代理であるむなしさ、みたいなもの。それは何となく分かるんだけど、広がりすぎて焦点を結べなかった印象も残る。周辺の「いろどりの人々」が、ちょっと作者の「ひとり呑み込み」的で、とっ散らかった感じになった。個々をもう少し明晰に描いてくれてもよかったんじゃないか、こっちの集中力が弱かったのかも知れないけど。他人に息を吹き込むことと、ろうそくの火を消すこと(生まれたことを祝うこと)という二つの息吹が重なるラスト。心の空虚を互いに満たし合おう、といったメッセージを読み取れる。青年が何の迷いもなく空気人形を受け入れるとこは感動した(破れの修理)。しかし、ビデオ店の店長(人形であることにも気がつかない)や、もとの持ち主(心を持ったことに戸惑う)との対応の違いに、ファンタジー内のルールがあることはあるらしいが、そこらへんがもひとつクッキリしてくれない、どうもルールを十分呑み込んでないスポーツを観戦しているようなヨソヨソしさが、最後まで残った。空気を注入されてあえぐ、ってのでは『田園に死す』の春川ますみの空気女のほうが先輩、あれもよかったなあ。