<ネタバレ>異様に嫉妬深い男をめぐるサスペンス、って部分では堪能した。読 .. >(続きを読む)
<ネタバレ>異様に嫉妬深い男をめぐるサスペンス、って部分では堪能した。読唇術の場面はもちろん、ホテルのベッドの上で死んだふりして捻じれて横たわっているあたりの、滑稽の極みのグロテスク、あるいはグロテスクの極みの凄惨。ちゃんと階段落ちもあり、嫉妬話だけに絞ればきれいに仕上がった映画だろう。しかしおそらくきれいすぎて現在の作品としては、いささか古典的という印象になっただろう。そこに余分なものが付着してコッテリし、焦点が曖昧になってくるところが、たぶんこの監督の味なんだ。主人公のとこに資本家のせがれライ-Xってのが訪れるところ。主人公はドアの覗き穴から来訪者を確認する。ややっ、実は目が見えているという設定なのか、とハテナを引っ掛けておいて、特別あとにハッキリさせてくれない。医者が失明です、と診断するシーンもちゃんとあったが、彼が自分の意志で映画監督という職業から退場した、という含みも残しているような。この曖昧さで膨らまされた世界の居心地の悪さ、暖色系のニコゴリの中にストーリーが漬けられているようなボンヤリ感、きっとそれがたまらないという悪食好きにとっては、蠱惑的な映画なのだろう。