いろいろ小津ごっこをやっていたが、話は成瀬的な侘しさ狙い。後 .. >(続きを読む)
いろいろ小津ごっこをやっていたが、話は成瀬的な侘しさ狙い。後ろ姿が印象に残る作品。顔が見えない家人、表情のうかがえない身内、自分から表情を隠そうとしている妻。侘しさが極まった果てでユーモアに弾ける、ってのを狙ったようだが、別々になってしまった。安易な言葉だけの笑いで済ませてしまったと言うか。個性派の役者を使ったことが裏目に出たよう。甲州への石拾いのあたりが一番良かった。サルマタが干してある縁側の向こうで虚無僧が尺八を吹くあたりは、侘しさと笑いがうまく絡み合った。こういう貧窮作家ものってジャンルが日本文学の伝統にあるよね。節を曲げず妻には苦労をかけ、その侘しさを味わいにしちゃう伝統。ひねくれたオノロケと言うか。東京という街を「侘しさ」で見るのはいいことだ。