前時代の没落を一身に体現するような福貴、賭けに没頭し、しかし .. >(続きを読む)
前時代の没落を一身に体現するような福貴、賭けに没頭し、しかし影絵をやらせるとけっこう器用、実に非生産的な男。賭けごとは阿片と同じで急にやめると体に悪いんだよ、なんて言ってる(寅さんも「急に地道に変わると体に悪いんだよ、徐々に変わるんだよ」って望郷篇で言ってたなあ)。なんかすごく自己を投影しやすいキャラクターだったが、主人公は彼ではなく、前向きに生きる女の方だった。そうだろうな。大躍進時代の金属供出を取り上げたのは、中国映画で私は初めて見た。さらに文革時代と、悪い時代を描いていく。悪い時代とは子が親に先立つ時代ってこと。未来をふさがれる時代。悪い時代を描いても“いかにも”の悪人は出さない。紅衛兵的な女医たちも、いざとなると糾弾していた老先生に救いを求めておろおろする。悪というより未熟さや愚かさを出している。まあけっきょく、昔は悪かったが今は良いってなるんだけど、振り返るだけいいんじゃないか、日本映画が近代史の暗い面を振り返らなくなって久しい。