特に前半がいい。設定が固まるまでは、ムチで打たれる薄幸の娘と .. >(続きを読む)
特に前半がいい。設定が固まるまでは、ムチで打たれる薄幸の娘と大時代なのだが、ニセの夫婦になるあたりからしみじみさせる(それにしても七階まで上がっていく階段がすごい)。とうてい身近とは思えない設定なのに、その細部は一つ一つ納得のいくリアリティで固めてある。物語の強み。警官の緊張が去り、ヒロインが荷物持って去っていこうとすると、チコが照れながら「まだいてもいいんだよ」と言う。まあ、甘いですねえ、でも泣けちゃいますねえ。プロポーズがわりの花嫁衣装。二人だけの結婚式。別れの時、11時。君の姿をしっかり焼き付けておくよ、というチコの眼になった視点、すべて伏線である。ここからガラッと大仕掛けのスペクタクルになって、後半は少し前半に比べ粗くなり、信仰のテーマが少々煩わしくもあったが、二人の生活の部分は実に甘美であり、それだけでメロドラマとして十分堪能。