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こういう「素直な笑い」の映画って、今では少ないよね。いつのころからか「うがった笑い」が主流になって、多人数のための笑いは難しくなっている。文化的洗練の結果かもしれないけど、笑いの伝統の柱を一本失ってしまった気がする。昭和24年という時代の輝きもあるわな。一応職業難の背景が描かれ、灰田勝彦の純粋芸術派が大衆芸術派へ「改心」していくという話もあるが、さして重要ではない。世相を見れば下山事件など暗いんだけど、それだけ戦争が終わった喜びを歌い続けていたいという心理も強くあったんだろう。この年のほかの映画を見ても『お嬢さん乾杯』『青い山脈』『小原庄助さん』と明るい。「前向きに明るく」というモットーをなんのてらいもなく掲げることの出来た時代。「カンカン娘」はけっこうスローテンポだったんだ。これは歌のヒットが先行して映画化になったんだろうな。同年の笠置シヅ子主演の『脱線情熱娘』ってのも見たんだけど、それ用の主題歌が別に作られているのに、ラストでは「カンカン娘」を歌って終わっていた。これを歌わなくちゃ客が納得しないというぐらいのヒットだったんだろう。さて本作、志ん生に独演させて終わらせるという憎い演出(あるいは手抜きのシナリオ)。[良:1票]