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<ネタバレ>破滅型芸術家と献身妻という類型ものだけど、妻がはっきりと亭主のプロデューサー役を自覚しているとこが面白い。旦那を世に送り出さねば、という使命感があって、つまり、旦那サイドの人間であると同時に、新しい芸術を享受したい世間サイドから彼を叱咤激励しにやってきた人間でもあるのだ。この妻、平安な家庭を一瞬たりとも望んでなくて、子どもも作らない。子どもはひとり(旦那のこと)でたくさん、と言う。旦那の死後、使命を終えてやっと自分の絵を28年間描き続けたってのもいい。こんな夫婦もあったのだ。ポロック自身のドラマとしては、自分の絵が本物かエセか悩むところ、前衛の不安がリアルに描かれた。おそらく新しい世界を切り拓こうとしたすべての芸術家は、同じ悩みを体験し、その新しい世界を提示できたもの・提示できずに前衛っぽいエセにしぼんでしまったもの・エセでなかったのに理解されず消えてしまったもの、いろいろあったのだろう。そもそも本物とエセって、はっきり区別できるものでもないだろうし。何よりこの映画ですごいのは、エド・ハリスがためらいもなく大きなキャンバスに筆を走らせていくところ。図版で見るポロックの代表作としか思えないものが目の前で出来上がっていくので、ドキュメンタリーのような迫力があった。