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<ネタバレ>二十歳をとっくに過ぎた童貞というのは私が今まで見聞きした範囲では、決して多くはないようだ。ある程度の年齢になれば大抵の人には普通に恋人ができ、自然にセックスを経験するからだ。所謂「ヤラハタ」の童貞くんは、その標準的なラインを大きく逸脱するだけの理由があるから童貞なのだ、ということがよくわかる本作。二部構成で二人の童貞の生態を探っている。ターゲットの二人は異なったタイプの童貞であるが、二人ともとにかく頑固で笑える。一作目も二作目も監督の編集センスが秀逸で、テンポよく入り込めるのだが、個人的に蛇足と感じたのは一作目エンディングで峯田和伸が童貞君作の名曲(?)「穴奴隷」を熱唱するシーン。童貞臭はあっても、れっきとしたバンドマンであり、女の子にもきゃーきゃー言われる彼が、ガチ童貞の無垢な世界に足を踏み入れてはいけないと思った。あと、映画館を出た時に、これまた童貞チックなお兄さん二人組が一作目について「童貞じゃなくなった過程を見せてくれなきゃ意味がない」と批判しているのを耳にした。私はそれには断固反対だ。童貞が童貞でなくなった瞬間、童貞はただの男になる。「童貞。をプロデュース」というタイトルどおり、いかに童貞(が童貞としての己の生き様に固執して生活している姿)が面白いか突きまくったのが本作なわけで、拘りを捨てた普通の男に用はない。実際、一作目のメガネ君の一年後の姿にはなぜか諦念のようなものが漂い、童貞だった頃の彼のある種の輝きは消失していた。なんとまあ童貞とは可笑しくていとおしい存在だろう。「童貞たちよ、恥じることはない、誇りを持て。君たちはビューティフル・ドリーマーなんだから」松江監督のそんな温かい眼差しを私は勝手に感じた。いやあ、私も童貞になりたいくらいだよ。二重の意味で無理だが。