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<ネタバレ>橋本忍が「複眼の映像 」で、七人の侍までは共同脚本を作る際に、小国英雄は一切執筆をせずに黒澤や橋本が書いたものを精査し、全体の流れを作る司令塔的な役割を果たしという。だから、七人の侍のような長大なシナリオでも、滞るなく流れるように話が進んだという。しかし、それ以降小国が自分も書くようになり、交通整理をする人がいなくなってしまった。その煽りを受けたのがこの作品であろう。出発までに1時間も掛けてしまったのは、いかにも長過ぎる。その序盤も七人の侍のように面白ければいいけど、それほど面白くもなかった。4人で脚本を書いたけど、整理を出来なかった例がこの作品に前半に出ている。しかし、その1時間を我慢すれば、至福のときが待っている。隠し砦を出発してからの逃走劇は黒澤映画の中でも屈指の面白さといえよう。見所はいくらでもあるが、やはり最後の関所の場面で、三船が村娘を馬に乗せるシーンは、アメリカの西部劇でも滅多に見ることができないだろう。元々黒澤は馬にはこだわりがあるようだが、これだけ馬を効果的に使った映画は、ジョン・フォードの「駅馬車」くらいだろうと言いたくなるほどの出来だ。作る手のプライドに感服してしまう。