<ネタバレ>惜しい。もったいない。
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<ネタバレ>惜しい。もったいない。
観終わって真っ先に感じた感想がそれでした。
「シン・ゴジラ」や「シン・ウルトラマン」は巨大怪獣や巨大外星人が人間を脅かす”状況”を描けばよかったのに対し、「シン・仮面ライダー」は人ならざるものになってしまったコミュ障男が、人知れぬ闘いを通じて愛や友情をつかみ取っていく「人間ドラマ」も大きなテーマのひとつになるだろうと思っていました。
確かにその材料となるドラマ要素はいくつもありました。本郷とルリ子の絆、ルリ子とハチオーグ(ヒロミ)の友情、強大な敵から最高の相棒へとなっていく一文字との友情…。
しかしいかんせん、それらを十全に生かすだけの尺が足りない。
たとえば、ルリ子はよくキャラクター的に庵野作品の先達綾波レイになぞらえられますが、綾波がヤシマ作戦というまさに「ともに命を賭けた闘い」を経てシンジとの絆を深め合ったのに対して、(そのポジションに位置するコウモリオーグ戦が本郷とルリ子の「共闘」と言えるほどの濃厚なバトルでもなくあまりにあっけなく片付いたせいで)その後のルリ子の信頼構築や態度軟化はなんだか唐突で、ルリ子が死ぬシーンでもいまいち涙腺が緩むほどのことも無く…といった次第でした。
もっとテレビシリーズとかでじっくりエピソードを描く余裕があれば―――
コウモリオーグVS本郷&ルリ子の激戦がちゃんと描かれれば、深まる本郷とルリ子の絆に感情移入できて、ルリ子との別れにも素直に涙できたんじゃないだろうか。
ヒロミとルリ子との物語がちゃんと描かれていれば、ハチオーグ戦でのルリ子の苦悩にも、その悲しみを目の当たりにした本郷が彼女の心に寄り添おうとする心情にももっと共感できたんじゃないだろうか。
そして、一文字との敵対関係がもっと時間をかけて描かれていれば、その後の彼の転向、本郷と最高のバディになってからの物語がより一層熱く盛り上がったんじゃないだろうか。
上映後はそんな事ばかり考えていました
以前宇宙戦艦ヤマトがキムタク主演で実写化された時、庵野監督にもオファーがあったそうで、その時監督が考えた案が
「あの長大な物語を一本の映画に詰め込むと無理が生じるので、ヤマトが改造され宇宙に飛び立つまでをじっくり描く」というものだったそうです。
描くべき要素を取捨選択し、じっくり掘り下げる―――昔自身が考えていたその方法論を今回採ってくれなかったのが残念でなりません。
(しかしそもそも、このビッグネームの監督作品で三部作、せめて二部作にする程度の構想はなかったのでしょうか…そうなっていたらこの作品の出来もかなり変わっていたのではないかと思います)
材料は上級ですが、調理時間が足りずにやや生煮えのままの料理を小さなお皿に無理やり山盛りにして出された感じ。
材料の評価(9点)と出来上がった料理の評価(6点)を足しで二で割って、今いちショボいVFX(あれは単に予算不足なのか、それとも昔風のチープな特撮風味を大事にする庵野美学なんでしょうか…)を減点して、7点献上します。
決してマズくはないんです。やや物足りないだけで。[良:2票]