まず“宗方姉妹”の妹の方を演じた高峰秀子。
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まず“宗方姉妹”の妹の方を演じた高峰秀子。
高峰秀子の出演作は『浮雲』をはじめ、意外と沢山見てきているが、本作での高峰秀子は最強のインパクトであった。
「本作における彼女は、彼女らしくない」と、批判の声も聞こえるようだが、いやいやかなり良かった。
特に、「~であった。」と、寅さんばりの独り語りをみせるところが秀逸。
ここに、彼女の特異な才能を見出すことができた。
次に姉の方を演じた田中絹代。
溝口作品で沢山観てきた女優だが、今まではどうも魅力を感じなかった。
特に、“女性として”の魅力を。
ところが、本作では不思議と、その“女性として”の魅力を感じることができたのだ。
あの慎ましやかな女性像。
現代の男にとっては憧れですね。
そして、その姉妹二人から想いを寄せられる色男役に上原謙。
終始、ニヤついた演技を見せている。
ずっと、いつでもニヤついているのだ。
ニヤつき頻度は、私が今まで観てきた映画の中でもナンバー1。
しかも、そのニヤつきが板についているから凄い。
さすがは上原謙。
ニヤつき上原謙。
上にも書いたように、高峰秀子が独り語りで、様々な魅力あふれる小話を披露する。
その中でも、最も私が心奪われた小話を、ここに引用してみよう。
ある寒い日、二人は皇居のお堀端を歩いていた。
男は手をつなぎたかった。
だけどつなげなかった。
二人は若かったのだ。
いつまでも歩いていたい二人であった。
しばらくして男は女に訊いた。
男「ねぇ、寒くないかい?」
女「いいえ。」
そして女はショールを肩に上げながら言った。
女「あなたは寒くないですか?」
最近、これに似た淡い経験をしたばかりなので、妙に心に沁みた。
人は自己の経験とオーバーラップするシーンを、映画の中に見出したりすると妙に感動する。
誰もが経験する自分の中の青春の1ページ。
それと似たようなシーンが、映像として刻まれている作品。
そんな作品を見た時、自分ならではのオリジナルな感動を味わえるのだ。
そして、それが映画の持つ固有の魅力なのだろうと思う。