<ネタバレ>溝口健二監督作品の中で、現存するものは全て鑑賞してきた。
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<ネタバレ>溝口健二監督作品の中で、現存するものは全て鑑賞してきた。
そして、最後に私が観ることにしたのが、溝口健二の遺作である本作だ。
溝口健二の過去の重厚な作品に比べると、軽い仕上がり。
現代劇ゆえか、晩年からくる衰えゆえか、はたまた意図的なものか。
原因たるは知る由もない。
京マチ子、若尾文子、木暮実千代らが名を連ね、実に豪華キャスト。
脇役陣も層が厚い。
しかしながら、群像劇的というか、それぞれの登場人物達の掘り下げが浅いというか、やや散漫な印象を受ける。
そんな中、浦辺粂子は意外なほどの存在感。
沢村貞子や進藤英太郎もベテランの味を十二分に発揮していた。
東京最強の赤線地帯、吉原をリアルタイムで描いたという点で、貴重な作品だ。
それも「売春禁止法」が制定される直前、まさに吉原が風前の灯火な状態であり、そこで生計を立てている人々の混乱が、実にリアルに繊細に描かれている。
実際に吉原で遊んでいたか、よっぽど吉原について入念に取材しない限り、描けなかったのでは?と思うほどの、リアルな描写とセリフの数々。
吉原という街の全盛期を知る上でも、この上なく興味深い内容となっている。
個人的に「売春禁止法」に関して言及すれば、制定されたことは実に残念なことである。
放置すれば、勿論、社会の悪がはびこってしまうことは勿論分かっている。
しかし、こうした規制法がどんどん増えていき、日本は時代が進むにつれ、面白くなくなっていった。
こうした規制をかけることは、社会的に言えば正論であるが、一方で、日本をつまらなくする。
私は批判を覚悟で、「売春禁止法」に断固、反対する!
いや、もうとっくのとうに遅い話だが。
現代で言えば、監視社会がそのテーマに該当する。
街のいたる処に監視カメラが設置され、人々の暮らしは常に監視下におかれ、つまり、「何も悪さのできないつまらない社会生活」が日に日に構築されている。
これを正論一言で、「犯罪抑止に役立つから素晴らしい!」と言ってしまえば簡単である。
だが、本当にそれでいいのだろうか?
こうした命題を本作は歴史を超えて、観る者に訴えかけている。