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<ネタバレ>現実世界で女を愛することから逃避しSMの世界に没頭する男と、SMの世界にひかれつつも没頭まではできず相手の男をあくまで現実的に愛そうとする女との、いびつなすれ違いを描いた偏愛的ラブロマンス。
アンリ=ジョルジュ・クルーゾーならではの、芸術的センス爆発な映像の数々。
惜しげもなく、というよりも、むしろ「これでもか!」と言わんばかりの映像の数々に、アンリ=ジョルジュ・クルーゾーの一種、自己陶酔的なものを感じた。
エリザベート・ウィネルという女優は初めて知ったが、とても魅力的な女優だ。
エリザベート・ウィネルが着こなすグリーンやレッドのワンピース、そしてそこから伸びる肉感的で美しい脚、画面に映えるブロンドヘアー、魅力的な瞳。それをこれだけ美しく捉えたアンリ=ジョルジュ・クルーゾーには、表面的な芸術的センスだけでなく、美しい女性を魅力的に撮るという、監督しての基本的な技量も同時に感じた。
話としては、SM的倒錯世界をテーマにしているが、本作で描かれるSMは、主人と奴隷という主従関係に重きを置いたものとなっている。
SMには詳しくはないが、これぞまさにSMの原点的な悦楽の世界なのではないだろうか。
女を服従させることで悦びを感じる男と、恥じらいながらもそれに服従することで悦びを感じる女との関係。
なんて完璧な相互依存関係なんだろう。
そこには、外界とは遮断された、二人だけの禁断の世界が広がっている。
だが、不幸なことに、本作のエリザベート・ウィネルが演じた女は、この世界に没頭することができず、ご主人様をご主人様として愛することができずに、普通の男として愛そうとする。
それを受け入れられない相手の男だが、心のどこかで純粋にその女を愛していると自覚してはいる。
男はその葛藤に悩まされ、自殺さえ考える。
だが結局、女を女として受け入れることがその男はできなかった。
その結果生まれた悲劇が、ラストの事故シーン。
全身ギプスで昏睡状態のエリザベート・ウィネルが、実に痛々しく哀しい。
アートな雰囲気を全面に出しつつ、こうした人間ドラマも深く掘り下げられた作品で、監督であるアンリ=ジョルジュ・クルーゾーの類い稀な才能を堪能することができ、本作は色んな意味で魅力あふれる作品だ。