騒々しく猥雑で、暗めの映像から、今村昌平監督の息吹を既にこの .. >(続きを読む)
騒々しく猥雑で、暗めの映像から、今村昌平監督の息吹を既にこの頃から感じ取ることができる。
どちらかと言えば好みの監督ではないのだが、長門裕之と南田洋子二人の体当たりの演技に、吸い込まれるようにして画面に見入った。
二人の接吻は、それはそれは、心がこもっていた。
これ以上ない、極上の接吻シーンである。
この二人の役者がこの世を去り、亡くなる間際に老い衰えた姿をテレビなどで見ると、さすがにこの世の無常を感じざるを得ない。
しかしながら、この二人の役者、いや、人間には、確実に輝いていた時代があったのだと、一種の安堵感に似たようなものを感じる。
誰にでも素晴らしき頃があったのだと。
今村昌平監督は、既にこの作品から巨匠としての歩みを始めていたように思う。
本作には既に、今村昌平監督の個性と力量が十分に発揮されていたからだ。