溝口健二の代表作の一つにして、『祇園の姉妹』と双璧を成す、溝 .. >(続きを読む)
溝口健二の代表作の一つにして、『祇園の姉妹』と双璧を成す、溝口の作品の中でも“初期の傑作”と呼ばれている作品。
主演は山田五十鈴。
彼女は本作出演時には20歳になったばかりだったらしい。
この年齢にしてあの演技。
確かに凄い。
さて、溝口健二の代表作の一つということで気合いを入れて鑑賞した。
でも実はそんなに期待もしていなかった。
何故かと言えば、同時期に作られた同じく代表作と言われる『祇園の姉妹』が、世間で言われているほどには感銘を受けなかったからだ。
実際、本作についてもそれは同じだった。
本作はとかく、日本映画で初めて“リアリズム”というものを高いレベルで表現した作品ということで高い評価を受けている。
社会的に高い地位にいる人を中心に描いた作品ではなく、社会の底辺にいる人を中心に描き、観る者の共感を得た歴史に残る作品なわけだ。
しかし、そんな歴史的経緯よりも、少なくとも私の様な一映画ファンにとっては、鑑賞してみて実際に楽しめるかどうかが重要な意味を持っている。
個人的には、溝口作品としては『祇園囃子(1953)』や『山椒大夫(1954)』や『雪夫人絵図(1950)』等の1950年代の“溝口後期作品”が好きである。
ただし1930年代の作品でも『残菊物語(1939)』は好きだったりもする。
そういうわけで、溝口初期作品としては“『残菊物語』に続いて『浪華悲歌』が二つ目のお気に入り作品になるのか?!”と期待して鑑賞したわけだが、残念ながらそうはならなかった。
まだ修行が足らないせいだろう、日本映画、海外映画を問わず、いまいち1930年代中盤以前の作品には感動できないでいる。
いつか1930年代中盤以前の作品でも感銘を受けることができるようになれればいいのだが・・・