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<ネタバレ>『恋人までの距離≪ディスタンス≫』が気に入った方はおそらくこの作品も楽しめたと思います。前作を裏切ることなく、期待以上の出来ばえでした。9年という月日が二人の容貌を変えています。しかし、肌のハリを失い、皺も目立ち始めたことでむしろ齢を重ねていい感じで熟しているという印象でした。
二人の精神的な核は9年前と変わっていません。相変わらず、たわいもないおしゃべりが続きます。ジェシーがアメリカへ帰る飛行機に乗るまでのたった90分、日が沈むまでのパリでの物語です。
お互い30代になり、ジェシーは結婚して子供を持ち、セリーヌもいくつかの恋や仕事の経験を重ねて大人になっています。
作品中では彼らは自分たちを「中年」と表現しています。確かに30代半ばは世間から見れば中年になるのでしょうね。でも2人の中では9年前とちっとも変わっていないのです。9年前にたった1日しか時間を共にしなかった相手がこんなにも自分の人生に影響を与える存在だなんて、素敵だと思いませんか。
重ねた時間じゃなくて、深さなんだろうなぁ、ある意味運命的なものなのかもしれません。2人ともあのウィーンでの1日を忘れることはなかったのですね。
自分の実体験と重ねあわせ、車中セリーヌの気持ちはせつなく痛いほど分かりました。
この映画の良さは会話と目線です。二人の視線がすごくいいですね。お互い、相手を観ているのに目をそらす感じが。あのしぐさと視線で2人とも9年前の気持ちと変わっていないんだなと確信しました。
最後のセリーヌのアパートでのシーンは、ホントに余韻のある終わり方でした。脚本がいいですね。観る人によってその後はいろいろ想像できます。最大の演出方法だと思います。
本作品もDVD購入しました。自分が死んだら棺おけにこのDVDを入れてもらい天国でも鑑賞したいお気に入りの作品です。このような作品に出会えてラッキーでした。
次の9年後は2013年です。彼らも40代半ばに入っていますね。この二人の次の行方を見続けたいと思います。