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<ネタバレ>この監督の表現の中心的な動機は暴力と性愛で、主人公の大半は社会の底辺に位置する社会不適格者である。物語は極端な設定の元、人間の醜悪な部分を露呈させ、悲痛な出来事が展開し、どんでん返しがあり、社会不適格者が神の如き存在に変容するという幻想的結末となる。その感情浄化が最大の魅力だ。そして随所に絵画、彫刻、水、魚へのこだわりと偏愛が見られるのも顕著な特徴だ。人物を甚だしく歪んで描くエゴン・シーレの絵の手法を映画に応用したものと考えればいいだろう。主人公は民宿女郎のジナ。非道なヒモの男に羈絆され、売春を強要されているように見えるが、諦念に達し、自分の運命を受容している。冒頭場面、猥褻雑誌の上からころげ落ちた亀が危うく自動車に轢かれそうそうになるのをジナが救うが、これはジナが性愛に汚れた男性の魂を救済する女神のような存在であることの象徴だ。但し、真の主人公はジナの民宿の娘、ヘミだ。彼女の変容こそが映画の主題。ヘナはジナと対照的に描かれる。年令は23歳で同齢だが、大学生で、性に対して潔癖で、恋人にも体を許さない上、男性の買春も是認しない。女らしさの象徴の髪は短く、豊満な肉体を固いシャツとジーンズで防護する。ヘナはジナを蛇蝎の如く嫌っていた。ヘナの恋人、弟、父親がジナと肉体関係を持つという悶着があり、両者は徹底的に衝突したが、一方で相互理解も生まれた。性愛の認識の違いを共有し、共に犠牲者であることもわかった。やがて、喧嘩友達に似た一種の友情が芽生えた。ある日、ヘミはジナの跡をつけた。本屋に寄り、カラオケをし、軽食堂で食事をし、ヘアピンを買う。相手は自分と変わらないと感じ、次は真似をしてみた。本屋に寄り、カラオケをし、食事をし、ヘアピンを買いと、同じ行動をすることにより、親密感が湧いた。その様子をジナも観ていた。ジナの自殺未遂という事件を経て、二人は姉妹のように仲良くなった。そして、ヘミは自ら売春に身を投じるようになる。それは、ジナに対する贖罪の意味があり、自己を犠牲にして性愛で男性を慰安する行為に対する崇敬のような想いが生じたからだろう。聖書の売春の傍観的批判者から、グラナダのマリアへの変容である。が、あまりにも理想的すぎて感情移入できない。売春はもっと悲惨であろう。金魚は海で生きていけないのを監督は知っているのだろうか?知っているのなら、自由は短いという比喩となる。[良:1票]