<ネタバレ>金で仕事を引き受けるプロのスナイパーの実態など誰も知らない。 .. >(続きを読む)
<ネタバレ>金で仕事を引き受けるプロのスナイパーの実態など誰も知らない。それを仕事の応諾から準備段階、狙撃までを細部にわたり見せたのが手柄。一方で、フランス当局が権力とマンパワーを総動員して、ジャッカルの正体を燻し出してゆく様子が並行して描かれる。どちらに肩入れするでもなく、対等に交互に描く演出が斬新で、それが今見ても新鮮な理由だろう。追い詰める捜査当局、出し抜くジャッカル、共に見事で、真のプロフェッショナルといえる。観客はその両方を観るわけで、成功か、失敗か、最後まで固唾を飲んで見守ることになる。鑑賞中、ジャッカルよりも捜査陣の手腕の方に感心したほど。それほど公正に描いていた。仕事が大統領暗殺という飛び切りの大仕事であるところが、観客を釘付けにする。外交問題にまで発展しかねないのでジャッカルの母国とされるイギリス当局も必死だ。忘れられがちなのは暗殺依頼者の右翼組織OAS。アルジェリアで独立運動が興隆すると、アルジェリア領有の継続を主張するOAS等の勢力は、引退していたドゴールを担ぎ出し、これが第五共和政の成立につながった。しかしドゴールはインドシナ戦争の経験から民族自決は必至と考え、独立を承認した。怒ったOASは大統領車を機関銃で乱射するが失敗、これが冒頭に出てくるプティ=クラマール事件だ。こうして実在組織や事件を巧みに取り入れ、現実味、真実味を出すことに成功している。計画は完全でも計画通りにいくとは限らない。少しのミスや予定外の事態が持ち上がるが、その見せ方が上手い。少しずつ破綻を見せ、警察はそれを手がかりとし、ジャッカルは巧みに修正してゆく。書類偽造師からの脅迫、捕まった組織構成員からジャッカルの名前が漏れる、交通事故、熟年未亡人の元に捜査が入る、殺人犯として公開捜査、女スパイが拘束される。ジャッカルが常にクールで淡々と行動するので目立たないが、結構な事が起こっているのだ。恋愛要素はないが、哀れさを誘う挿話がある。熟年未亡人はジャッカルに情けをかけたが故に殺されてしまう。若年未亡人は夫の写真と手紙を燃やし、スパイとなって敵方に体をゆだねる。共に美しいヌードを交え、印象を残す。残念なのは最後ジャッカルが警備員に自分の行く住所を話してしまったこと。あれは嘘でいい。警備員の話をヒントに警部がしらみつぶしにビルを調べる展開なら良かった。あと、最後は「飛びすぎ」と思う。良作。