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<ネタバレ>いきなりイーサン最大の危機の場面から始まる。事態は目まぐるしく変化し、スピーディで切れのあるアクションに次ぐアクション、裏切りと真相の意外性、随所にちりばめられたスパイ味、最愛の人の生と死、息をつかせぬ展開で最後まで魅せる。
だが決して良質の映画とはいえない。退屈凌ぎにはなるが、感動や爽快感とは無縁だ。いわゆるご都合主義が多過ぎるせいだ。
最初の女部下救出場面。イーサン参加時点で、既に敵と人質の居場所が分っているのはもったいない。見つけ出す過程が楽しいのに。それに引退したイーサンをわざわざ召集する理由もない。自動機関銃や爆薬を使っての荒々しい救出劇や敵を無慈悲に殺すやり方には問題がある。敵ヘリの攻撃をかわすためにヘリが風力発電の風車群をくぐりぬけるのはよいが、敵ヘリもそれに追従するのは不自然だ。上空からミサイルを撃ちこめばいい。それみたことか、衝突してしまった。それとわざわざ頭蓋に時限爆弾を仕込む理由は無いだろう。
バチカンでの武器商人デイヴィアン確保作戦。本人そっくりに変装したり、声を再現したりするが、嘘っぽい技術だ。そんなことしなくてももっとスマートにやれると思う。それ以外の作戦は巧妙だっただけに残念だ。秘密兵器ラビットフットはデイヴィアンが高額で誰かに売るという話だったのに、イーサンが奪った書類にラビットフットの在処が書かれていて、妻を人質にとられたイーサンがそれを奪う展開になる。あれれ、デイヴィアンは本来どうやってラビットフットを入手する予定だったの?上海での場面。イーサンが人民軍の拠点ビルに振り子の原理で侵入してから、どうやってそれを盗み出したかは省略されている。これももったいない。ここでも簡単に人を殺す。妻命優先、他人命無視が甚だしい。ここから終盤にかけて盛り上がらない。デイヴィアンも真の裏切り者も弱すぎるのだ。瀕死のイーサン妻が銃で敵を仕留めるのは漫画的。そして頭蓋のイーサンの時限爆弾処理の顛末は誰でも予想がつく。
結局のところ観客を興奮させることにばかりに意を注ぎ、繊細さに欠ける脚本に問題がある。組織内に裏切り者がいるという設定は安意だし、後味が悪い。ラビットフットの正体が不明のままで終るのも脱力でしかない。真の娯楽映画は後味が良いものだ。良くも悪くもハリウッド映画の典型。